抗がん剤、自己免疫性疾患、アレルギー疾患、脂質異常症、などなど
分子標的薬が続々と、臨床応用が始まっております。
ついに、抗凝固療法にも分子標的:完全ヒトモノクローナル抗体(不活性型の第 XI 因子に結合し,その活性化を阻害)が出ました。
Abelacimab versus Rivaroxaban in Patients with Atrial Fibrillation
N Engl J Med. 2025 Jan 23;392(4):361-371.
AZALEA-TIMI 71 ClinicalTrials
月一回の注射でOK。すごいなぁ。今後もどんどん便利な薬が出るでしょうね。
「どんなに技術が進んでもこれだけは変わらねえ。 機械を作るヤツ、整備するヤツ、使うヤツ、人間の側が間違いを起こさなけりゃ機械も決して悪さはしねえもんだ」
(じつはわたくしも抗凝固新薬の治験のメンバーで登録していたことがあります。)
以下NEJMの日本語サイトからの引用です。
背景
アベラシマブ(abelacimab)は,不活性型の第 XI 因子に結合し,その活性化を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体である.心房細動患者における,直接経口抗凝固薬と比較したアベラシマブの安全性は明らかにされていない.
方 法
心房細動を有し,脳卒中リスクが中~高の患者を,盲検下でアベラシマブ(150 mg 月 1 回または 90 mg 月 1 回)を皮下投与する群と,非盲検下でリバーロキサバン(20 mg 1 日 1 回)を経口投与する群に,1:1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,大出血または臨床的に重要な非大出血の複合とした.
結 果
1,287 例が無作為化され,年齢中央値は 74 歳で,44%が女性であった.3 ヵ月の時点で,遊離型第 XI 因子濃度の低下率の中央値は,アベラシマブ 150 mg で 99%(四分位範囲 98~99),90 mg で 97%(四分位範囲 51~99)であった.アベラシマブによる出血イベントの減少が予測を上回ったため,独立データ安全性モニタリング委員会の勧告に基づき,試験は早期に中止された.大出血または臨床的に重要な非大出血の発生率は,アベラシマブ 150 mg で 3.2 件/100 人年,90 mg で 2.6 件/100 人年であったのに対し,リバーロキサバンでは 8.4 件/100 人年であった(リバーロキサバンに対するアベラシマブ 150 mg のハザード比 0.38 [95%信頼区間 {CI} 0.24~0.60],リバーロキサバンに対するアベラシマブ 90 mg のハザード比 0.31 [95% CI 0.19~0.51],両比較について P<0.001).有害事象の発現率と重症度は,3 群で同程度と思われた.
結 論
脳卒中リスクが中~高の心房細動患者のうち,アベラシマブを投与した患者では遊離型第 XI 因子濃度が著しく低下し,リバーロキサバンを投与した患者よりも出血イベントが少なくなった.(アンソス セラピューティクス社から研究助成を受けた.AZALEA–TIMI 71 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04755283)
追加情報
現在、利用可能な抗凝固療法を使用できない高リスク心房細動患者を対象に、脳梗塞および全身性塞栓症の予防におけるabelacimabの有効性をプラセボと比較する第III相試験(LILAC-TIMI 76試験)が進行中