エンリシチドデカン(Enlicitide decanoate:開発コードMK-0616)は、世界初の経口PCSK9阻害薬。
まずは、感想。
患者負担的には、PCSK9の注射と一緒で、まとめて3か月分処方で、支払い月をまとめれば、OK。
冷中保存がいらないのなら、注射製剤より管理が楽なので、使いやすい。
実臨床では隔日投与などもされるのが容易に想像できる。でも効果ありそう。
早く使えるようになりますように。
以下、データなどから。
第3相臨床試験(CORALreefシリーズ)のエビデンスでは、プラセボと比較してLDLコレステロール(LDL-C)を約56%低下させ、既存の注射型抗体製剤と同等レベルの強力な低下作用が確認。
2025年のAHAで以下報告あり。CORALreef Lipids試験
P(Patient:対象患者)
スタチン療法(中〜高強度)を受けている、またはスタチン不耐性の患者。
かつ、以下のいずれかを満たす:
動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往があり、LDL-Cが55mg/dL以上
ASCVDの既往はないが、主要リスク因子が1つ以上あり、LDL-Cが70mg/dL以上
※ただし、3カ月以内のASCVDイベント、直近のPCSK9阻害薬使用、管理不良の糖尿病、中性脂肪400mg/dL以上などの患者は除外。
I(Intervention:介入)既存の脂質低下療法にenlicitide(20mg、1日1回経口投与)を上乗せ
C(Comparison:比較)既存の脂質低下療法にプラセボを上乗せ
O(Outcome:結果・評価項目)
有効性: 24週後のLDL-C変化率は、enlicitide群で-57.1%(プラセボ群は+3.0%)となり、有意な低下を認めた(52週後も効果を維持)。また、LDL-C 70mg/dL未満かつベースラインから50%以上低下を達成した割合はenlicitide群で70.3%(プラセボ群1.5%)だった。
安全性: 有害事象の発生率(enlicitide群64.3% vs プラセボ群62.1%)や重篤な有害事象、投与中止率において両群間に大きな差はなく、高い安全性と忍容性が示された。
既存の注射薬(PCSK9抗体製剤)と同等の強力なLDL-C低下効果を、1日1回の「経口薬(飲み薬)」で安全に達成できることが確認された。
_________以下日経メディカルから
CORALreef Lipidsの対象は、
(1)中~高強度の安定したスタチン療法下ないしはスタチン不耐、
(2)動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往がありLDL-Cが55mg/dL以上、もしくはASCVDの既往はないが主要なリスク因子が1つ以上ありLDL-Cが70mg/dL以上
──などを満たす患者とした。ASCVDイベントから3カ月以内、PCSK9阻害薬の直近の投与歴がある、管理されていない糖尿病、中性脂肪400mg/dL以上などに該当する患者は除外した。
適格とされた患者を、既存の脂質低下療法にenlicitide(20mg、1日1回経口投与)を上乗せする群もしくはプラセボを上乗せする群に、2対1でランダムに割り付けた。主要評価項目は、24週後のLDL-Cのベースラインからの変化率、有害事象の発生率、有害事象による被験薬の中断率とした。
ランダム割り付けされた2912例中、重複症例(3例)を除いた2909例(enlicitide群1940例、プラセボ群969例)をintention-to-treat(ITT)集団とした。
対象集団は平均年齢63歳、女性比率39%、LDL-C 96.1mg/dL、58%にASCVDの既往があり、49%が2型糖尿病を合併していた。97%にスタチンが投与されており、その95%は中~高強度だった。人種は白人54%、アジア系26%、黒人9%など、居住地域は欧州/中東/アフリカ26%、北米29%、中南米20%、アジア太平洋25%などであり、どちらも大きな偏りはなかった。
enlicitide群のLDL-Cは、ベースラインの95.0mg/dLから24週後には38.7mg/dLに低下した(変化率-57.1%)。プラセボ群の変化率は+3.0%(98.3mg/dL→98.6mg/dL)であり、有意な群間差を認めた(最小二乗平均の差:-55.8%ポイント、95%信頼区間:-60.9~-50.7、P<0.001)。52週後も大幅なLDL-Cの低下は維持されていた(enlicitide群-50.4%、プラセボ群+4.0%、最小二乗平均の差:-47.6%ポイント、95%信頼区間:-52.7~-42.5、P<0.001)。
なお、LDL-Cは超遠心法で測定されたが、enlicitide群の5例でベースラインデータに不備があり、当初の統計処理計画に従うと、当該症例のLDL-C変化率が極端な外れ値になり、全体の結果にも影響が及ぶことが判明した。そこで事後解析として、当該症例のベースラインデータは欠測とし、可能であればMartin-Hopkins法による計算値を使って再解析したところ、24週後のLDL-C変化率は-59.6%(群間差-59.7%ポイント)、52週後は-52.7%(同-52.4%ポイント)と、数値的にはより上積みされた。
LDL-C 70mg/dL未満かつベースラインから50%以上低下した患者の割合は、enlicitide群は70.3%に及んだ(プラセボ群1.5%)。
安全性に関して、何らかの有害事象の発生率はenlicitide群64.3%、プラセボ群62.1%(以下、同順)、重篤な有害事象の発生率は9.9%、12.0%、有害事象による被験薬の中止率は3.1%、4.1%だった。
enlicitideにおけるLDL-Cやアポリポ蛋白B(ApoB)、リポ蛋白(a)[Lp(a)]などの脂質パラメーターの低下率は、PCSK9に対する抗体製剤であるアリロクマブ、エボロクマブとほとんど変わらなかった。これについてNavar氏は、「抗体とポリペプチドという違いはあるが、PCSK9とLDL受容体の結合の阻害という機序は同じであることが反映された」との見解を示した。
Navar氏は「人種による差はなく、既存の抗体製剤と同程度のLDL-C低下率を経口薬で達成することができた。enlicitideの安全性、忍容性は高く、ASCVDのまん延に対し、脂質管理の理想と現実のギャップを埋める有力なツールとなるだろう」と結論付けた。